第1章 使用機器と演習ネットワーク【共通】
共通(必須) | 前提: 基礎編の修了 | 所要時間の目安: 約20分 | 進め方(モジュールの選び方)
この章の目的
Section titled “この章の目的”ヤマハ実機演習編へようこそ。ここからみなさんは、ネットワークを「使う側」から 「作る側」 に回ります。
基礎編で学んだ住所(IPアドレス)も、配達係(スイッチ・ルーター)も、自動配布係(DHCP)も、ここからは全部 自分の手で設定 します。教科書の図の中にあったネットワークが、目の前の机の上に、本物の機械として並びます。
この章では、道具の顔ぶれと、チームの体制と、この演習の地図を頭に入れます。まだ何も配線しません。あわてず、全体像からいきましょう。
1-1 この編の地図 — 演習の流れ
Section titled “1-1 この編の地図 — 演習の流れ”実機演習編は、共通パートを作ってから、選んだモジュールに進む構成です。どのモジュールを実施するかは、時間に応じて決めます(詳しくは 進め方(モジュールの選び方))。
| 区分 | 章 | やること | 基礎編の対応章 |
|---|---|---|---|
| 共通 | 第1章(この章) | 機器と環境を知る | 第1章 |
| 共通 | 第2章 | 配線して、ルーターを設定し、支店のLANを作る | 第3・4・7章 |
| 共通 | 第3章 | スイッチをLAN Monitorで管理する | 第3・8章 |
| A | 第4章 | インターネットに接続する(NAT) | 第5・7章 |
| B | 第5章 | VPNで本社と支店をつなぐ(前提=A) | 第6・7章 |
| C | 第6章 | VLANでネットワークを分ける | 第3・7章 |
| D | 第8章 | ポートミラーリングで通信を覗く | 第3・8章 |
| 仕上げ | 第7章 | わざと壊れたネットワークを直す(総合演習) | 第8章 |
この章から第3章までは、どのモジュールを選ぶ場合でも共通の前段です。A→B は「支店を作って本社とつなぐ」1本の物語としてつながっていて、C・D はそれぞれ単独で実施できます。
1-2 機器の顔ぶれ
Section titled “1-2 機器の顔ぶれ”各チームの机には、次の機器が並びます。
| 機器 | 台数/チーム | 役割 |
|---|---|---|
| RTX1200(ヤマハ製ルーター) | 1台 | チーム(支店)のルーター。管理名は T{n}-RTX |
| SWX2110-5G(ヤマハ製スイッチ・5ポート) | 1台 | チームのスイッチ。管理名は T{n}-SW |
| ノートPC(Windows 11) | 2台 | PC-A(設定担当)と PC-B(確認担当) |
講師側(本社)には、次の機器があります。
| 機器 | 役割 |
|---|---|
| RTX1210(ヤマハ製ルーター) | 本社のルーター(HQ-RTX)。もう1台は予備・デモ用 |
| NAS(Synology製) | 本社のファイルサーバー。「本社の共有フォルダーが開けたら成功」の到達点 |
| TP-Link TL-SG108E(スイッチ・8ポート) | VLANの拡張演習用(第6章・希望チームのみ) |
スイッチの設定は「LAN Monitor」で行います
SWX2110-5G には、ルーターの管理画面のようなWeb設定画面から入るのではなく、PCに入れた Yamaha LAN Monitor というアプリから設定を行います(第2章で顔合わせをして、第3章から本格的に使います)。「機器によって設定の入り口が違う」というのも、実務あるあるの1つです。
1-3 チームの体制 — 2人で1つの支店を作る
Section titled “1-3 チームの体制 — 2人で1つの支店を作る”演習は2名1組・6チームで進めます。PCが2台あるので、役割を分けます。
| 役割 | 使うPC | 仕事 |
|---|---|---|
| 設定係 | PC-A | ルーターの管理画面を開き、設定を入力する |
| 確認係 | PC-B | 設定のたびに ipconfig や ping で「本当にそうなったか」を確かめる |
大事なルールが1つ。章が変わったら、役割を交代してください。設定と確認は、どちらも「作る側」の必須スキルです。この演習が終わるころには、2人とも両方を経験している状態を目指します。
この「交代」は、2人が担当するPCを入れ替えるという意味です。PC-A(設定用)・PC-B(確認用)という 機器そのものの役目は、章が変わっても固定 です(たとえばPC-Aは、どの章でもルーターの管理画面を開く担当機です)。テキストで「設定係はPC-Aで…」と書いてあるときは、その章でPC-Aを担当している人のことだと読んでください。
1-4 今日の物語 — 本社と、6つの支店
Section titled “1-4 今日の物語 — 本社と、6つの支店”今日の演習には物語があります。
「あなたのチームは、新しくできた支店のネットワーク担当です。支店のLANをゼロから立ち上げ、最後は本社とVPNでつないで、本社のファイルサーバー(NAS)を開けるようにしてください」
全体の構成はこうなっています。
図1-1 全体構成 — 本社(講師)と6つの支店(各チーム)
- 本社 = 講師側。ルーター(RTX1210)とファイルサーバー(NAS)がいます
- 支店 = あなたのチーム。ルーター・スイッチ・PC2台で支店LANを作ります
- 真ん中の帯は 研修室のLAN です。本来なら通信会社の回線・インターネット(基礎編第1章)にあたる部分の「研修用の代役」で、研修室のLAN端子がその入り口になります
WAN側の住所は「自動でもらう」
本物のインターネット契約では、ルーターのWAN側にはグローバルIPアドレス(基礎編第4章)が割り振られます。この研修では、その代わりに 研修室のLANのDHCPが、ルーターのWAN側に住所を自動配布 します。「家のルーターが回線につながると、外側の住所を自動でもらう」のと同じ形です。だからWAN側の住所は決め打ちせず、当日調べて使います(第4章で登場)。
1-5 自分のチームの値 — チーム番号がすべてを決める
Section titled “1-5 自分のチームの値 — チーム番号がすべてを決める”演習で使う値は、チームごとにバラバラに決めるのではなく、チーム番号 n から規則で決まります。
| 項目 | 規則 | チーム3の例 |
|---|---|---|
| 支店のネットワーク | 192.168.n0.0/24 | 192.168.30.0/24 |
| ルーターのLAN側IP | 192.168.n0.1 | 192.168.30.1 |
| DHCPで配る範囲(PCはここから自動取得) | 192.168.n0.101〜150 | 192.168.30.101〜150 |
| 予約席・PC-A(第6章VLAN体験用) | 192.168.n0.11 | 192.168.30.11 |
| 予約席・PC-B(第6章VLAN体験用) | 192.168.n0.12 | 192.168.30.12 |
基礎編の知識で、この設計の意図が読み取れるはずです。
- ルーター(.1)や予約席(.11・.12)などの 固定の番地は .99 まで に集めてある
- PCはふだんDHCP(.101〜150)で動きます。.11・.12 は第6章のVLAN体験のときだけ使う予約席です
- DHCPで配る範囲(.101〜)は 固定の番地と重ならない ように離してある(基礎編第7章の「固定機器を配布範囲に含めない」の実践です)
この規則さえ覚えれば、以降の章で「自分のチームの値」を毎回自力で導き出せます。 演習中に迷子になったら、この表に戻ってください。
なお、WAN側の住所はこの表にありません。WAN側は研修室のDHCPから自動でもらうため、当日にならないと決まらないからです(第4章で、自分のチームのWAN側の住所を調べて台帳に書き出します)。
1-6 演習の約束ごと
Section titled “1-6 演習の約束ごと”安全に、全チームが完走するための約束です。
- ケーブルで輪を作らない — スイッチのポート同士をつなぐと、LAN全体が麻痺します(基礎編第3章の「ループ」)。配線は必ず手順どおりに
- 他チームの機器に触らない — 全チームの設定値は規則で決まっているので、隣のチームの機器に触ると事故になります
- 設定値は必ず「自分のチームの値」を使う — 1-5の規則から導出。思いつきの値を入れない
- 「つながらない」は失敗ではない — 原因を切り分けて直すところまでが演習です。基礎編第8章の手順(自分→出口→外)がそのまま武器になります。そして第6章では「つながらないのが正解」の場面すら登場します
- 困ったら、まず構成図 — 図1-1と各章の図に戻って、「いま、どの機器の間の話か」を指でさして確認する(基礎編第1章の教えです)
LANマップのデモについて
演習の途中で、講師側の機器(RTX1210)を使った「LANマップ」— ルーターの画面上でネットワーク全体の機器が見える機能 — のデモを行う予定です。みなさんのRTX1200では使えない機能なので、操作はせず「こういう管理の道具もある」という見学です。
問題を解いてから、「解答と解説」で答え合わせをしてください。
問題1(値の導出)
Section titled “問題1(値の導出)”あなたはチーム4です。次の値を、1-5の規則から導き出してください。
- 支店のネットワーク
- ルーターのLAN側IPアドレス
- PC-B の予約席のIPアドレス(第6章VLAN体験用)
問題2(値の導出)
Section titled “問題2(値の導出)”チーム5のDHCP配布範囲に、ルーター(192.168.50.1)や予約席(192.168.50.11・.12)が 含まれていない ことを確かめてください。そして、なぜ含めてはいけないのか、基礎編の知識で説明してください。
問題3(機器の役割)
Section titled “問題3(機器の役割)”次の機器の役割を、それぞれ一言で答えてください。
- RTX1200
- SWX2110-5G
- NAS
問題4(物語の理解)
Section titled “問題4(物語の理解)”今日の演習のゴールを、「支店」「本社」「VPN」「NAS」の4つの言葉を使って1文で説明してください。
問題1の解答を表示する
解答: ①192.168.40.0/24 ②192.168.40.1 ③192.168.40.12
チーム番号4が第3オクテットの「40」になる、という規則が使えていれば正解です。この導出は明日以降、実務で自社のアドレス設計書を読むときの練習にもなっています。
問題2の解答を表示する
確認: チーム5の配布範囲は 192.168.50.101〜150。ルーター(.1)も予約席(.11・.12)も範囲外。
理由の例: DHCPが固定機器と同じ番地を別のPCに配ってしまうと、住所の重複が起きて通信が混乱するから。固定の住人がいる番地は配布範囲から外しておく必要がある。
基礎編第7章の「貸してもらう住所と固定の住所の使い分け」の実践です。
問題3の解答を表示する
解答例: ①チーム(支店)のルーター(ネットワークの出入口) ②チームのスイッチ(LANの中の配達係) ③本社のファイルサーバー(演習のゴール地点)
基礎編第1章の「機器は役割で見る」がそのまま使えます。
問題4の解答を表示する
解答例: 自分たちの支店のLANを立ち上げ、本社とVPNでつないで、本社のNAS(ファイルサーバー)の共有フォルダーを開けるようにする。
このゴールから逆算すると、第2章(配線と住所)→第4章(インターネット)→第5章(VPN)という道のりの必然性が見えてきます。
- 基礎編 第1章 ネットワークの全体像 — 機器の役割と構成図の読み方は、この演習の土台です
- 基礎編 第4章・第7章 — 1-5のアドレス設計(固定域とDHCP範囲の分離)の理由がここにあります
- 第2章 ルーターの接続と基本設定 — 次の章から、いよいよ手を動かします