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第6章 AIに調べさせ、根拠を確かめさせる高度な調査技術

この章で身につけるのは「検索」より後の技術

Section titled “この章で身につけるのは「検索」より後の技術”

AIへ疾患名を入力すれば、概要はすぐに表示されます。しかし、大学課題で必要なのは、もっともらしい説明を得ることだけではありません。

この章では、AIへ次の仕事を分けて任せます。

  1. 課題から調べる問いを抽出する
  2. 調査範囲と情報源を決める
  3. 候補資料を集める
  4. 採用する元資料を保存する
  5. 主張、数値、引用を元資料と照合する
  6. 相違と未確認事項を残す
  7. 確認済みの材料をWorkやスライド作成へ渡す

医学系の題材を使いますが、中心は医学知識そのものではありません。AIに何を調べさせ、どのファイルを残し、どの別タスクで確かめるかを学びます。

この章では機能比較を繰り返さない

Section titled “この章では機能比較を繰り返さない”

Chat、ウェブ検索、Deep Research、Work、Codexの基本的な役割は、講座トップから第3章で扱いました。この章では同じ機能表をもう一度覚えず、調査結果を使える材料へ変えるテクニックに集中します。

一つの長い依頼へ、検索、要約、制作、検証を混ぜると、どこで情報が加わり、何が確認済みなのか分かりにくくなります。調査したAIにそのまま「正しいですか」と聞くだけではなく、資料と判定基準を限定した検証工程を作ります。

医学調査で現れやすいハルシネーション

Section titled “医学調査で現れやすいハルシネーション”

第1章で扱ったハルシネーションは、医学系課題では次の形で現れます。

AIが示した内容外部で確認する場所
論文名、著者、雑誌名PubMed、雑誌公式ページ、論文PDF
DOI、PMID、URLDOIの登録先、PubMed、公開元サイト
ガイドライン名、発行年、推奨学会・公的機関の公式ページと原文
数値、単位、対象者数、期間論文本文、表、図、補足資料
「効果がある」「原因である」などの結論原文の結果、限界、対象集団、研究デザイン

注意するのは、完全に存在しない資料だけではありません。実在する論文名へ別の内容を結び付ける、数値だけを取り違える、原文より強い結論へ変えることもあります。

確認は三段階に分けます。

  1. 実在確認:資料、著者、識別情報が本当に存在するか
  2. 原文確認:数値、引用、結論が元資料に書かれているか
  3. 対応確認:その根拠が今回の対象者、問い、文章を実際に支えるか

AIへ確認候補を整理させることはできますが、AIの「確認できました」という文章だけを確認済みの根拠にはしません。

現在の作業が曖昧なら、AI自身に切り分けさせられます。

プロンプト例
この依頼には、調査、資料選択、文章作成、根拠確認が混ざっています。
まだ実行せず、作業を分けてください。
各工程について、使う機能、入力資料、受け取る中間成果物、
人が確認する地点を示してください。

1 課題を「調べる問い」へ分解する

Section titled “1 課題を「調べる問い」へ分解する”

Deep Researchを開く前に、通常Chatへ課題要項を渡して調査項目を抽出させます。この段階では答えを書かせません。

プロンプト例
添付した課題要項を読み、調査を始める前に次を整理してください。
- 提出物と提出形式
- 課題の中心となる問い
- 調べる必要がある小さな問い
- 指定された資料と使用禁止の資料
- 必要な数値、図表、引用
- 本人が判断しなければならない点
- 不足している条件
医学的な説明やレポート本文は、まだ作らないでください。

たとえば「疾患について患者へ説明する」という課題でも、疾患概要、検査、治療、生活上の注意、受診時の質問など、調査対象は複数あります。何を扱うかは課題要項と授業資料から決めます。

結果をresearch-brief.mdとして残します。

課題の目的:
対象読者:
調べる問い:
対象集団:
対象期間:
優先する情報源:
必要な成果物:
扱わない範囲:
不足している条件:

このファイルが、Deep Research、Work、Codexへ共通して渡す調査の入口になります。

2 広い候補調査と、指定資料の読解を分ける

Section titled “2 広い候補調査と、指定資料の読解を分ける”

機能の選び方は第1章と第2章を参照します。ここで重要なのは、広いWeb調査と、採用したPDFだけを読む作業を同じ依頼にしないことです。

  • 候補資料を広く探す段階では、Deep Researchまたはウェブ検索を使う
  • 採用した論文PDFを読む段階では、Work、Codex、PDF用Skillへ資料を限定して渡す
  • 根拠表やWord文書として残す段階では、WorkまたはCodexを使う
  • 同じ照合順序を繰り返す段階では、自作Skillを使う

どこから分ければよいか迷った場合は、次のように尋ねます。

プロンプト例
いま手元にあるのは、Deep Researchの報告、候補URL、論文PDF3本です。
レポート本文を作る前に、どの資料を何の目的で確認し、
どんな中間ファイルを残すべきか提案してください。

3 Deep Researchの調査計画を修正する

Section titled “3 Deep Researchの調査計画を修正する”

Deep Researchへ依頼した後、すぐに開始せず、提示された調査計画を確認します。

  1. 目的:何の成果物を作るための調査か
  2. 対象:年齢、集団、条件、除外範囲
  3. 問い:何を比較・確認するか
  4. 情報源:公的機関、専門学会、レビュー、原著論文など
  5. 期間と言語:発行年、日本語・英語の範囲
  6. 必要な識別情報:DOI、PMID、URL、更新日
  7. 出力:候補資料、比較表、不一致、未確認事項
プロンプト例
架空の大学課題に使う資料を調査してください。
目的:疾患説明レポートと短い発表資料の材料を集める
対象:課題要項に記載された成人患者
問い:research-brief.mdに記載した項目
優先する情報源:授業指定資料、日本の公的機関・専門学会、査読済み論文
期間と言語:現在有効な情報を優先し、日本語と英語を対象にする
出力:
- 調査計画
- 情報源候補一覧
- 各資料で確認できる内容
- 資料間で一致しない点
- 追加確認が必要な点
最初に調査計画を提示し、開始前に確認を求めてください。
  • 課題と無関係な領域まで広がっていないか
  • 患者向け情報だけ、または専門家向け情報だけに偏っていないか
  • 一次資料や公式資料へ到達する計画になっているか
  • 新しさだけでなく、授業指定資料との関係も扱っているか
  • 成果物の執筆まで勝手に含めていないか

不足していれば、開始前に「この問いを追加する」「この情報源を優先する」「レポート本文は作らない」と修正します。

4 候補資料を選別し、元資料を保存する

Section titled “4 候補資料を選別し、元資料を保存する”

Deep Researchの報告は中間成果物です。報告文だけをWorkへ渡さず、採用する元資料を開いて保存します。

候補資料種類課題との関係原文を開けるか採否理由
資料名公的資料/ガイドライン/レビュー/原著論文どの問いに使うかPDF/HTML/未取得採用/保留/不採用更新年、対象、内容

AIへ候補を分類させても、採否は人が決めます。採用した資料だけを01_sources/へ保存し、候補だけの資料と混ぜません。

第3章で作り、第4章で本人メモを加えたacademic-assignment/を継続して使います。この章のために別の課題フォルダを作り直しません。

academic-assignment/
├─ AGENTS.md
├─ 00_requirements/
│ ├─ assignment.pdf
│ └─ research-brief.md
├─ 01_sources/
│ ├─ source-register.md
│ ├─ guideline.pdf
│ └─ paper.pdf
├─ 02_analysis/
│ ├─ my-ideas.md
│ ├─ paper-profile.md
│ └─ evidence-table.md
├─ 03_report/
├─ 04_slides/
└─ 05_verification/

source-register.mdには、ファイル名、正式タイトル、公開主体または雑誌名、年、DOI・PMID・URL、採用理由を記録します。

5 論文PDFをAIへ読ませるときの指定

Section titled “5 論文PDFをAIへ読ませるときの指定”

「この論文を要約して」だけでは、課題に不要な情報まで均等にまとめられます。読む目的と残すファイルを指定します。

プロンプト例
01_sources/paper.pdfを読み、レポート作成前の分析だけを行ってください。
02_analysis/paper-profile.md:
- タイトル、著者、雑誌名、年、DOIまたはPMID
- 研究目的
- 研究デザイン
- 対象と除外条件
- 方法
- 主要結果
- 著者が示した限界
02_analysis/evidence-table.md:
- 課題で使用候補となる主張
- 対応するページ、節、表、図
- 数値、単位、分母、比較対象
- 解釈上の注意
論文中で確認できない内容は追加しないでください。
レポート本文はまだ作成しないでください。

AIが本文だけを読み、表や図の条件を落とすことがあります。主要な数値は次の項目へ分解させます。

  • 数値
  • 単位
  • 分母
  • 対象集団
  • 比較対象
  • 測定時点
  • 記載位置

画像として埋め込まれた表を読めない場合は、該当ページの画像または表データを別に渡します。

6 主張と出典を一対一で追える根拠表を作る

Section titled “6 主張と出典を一対一で追える根拠表を作る”

長い要約ではなく、原稿で使う主張を単位にした根拠表を作らせます。

ID原稿で使う主張元資料根拠位置数値・条件状態
C-01原稿候補の一文論文・資料名ページ、節、表、図対象、単位、期間確認済/相違/未確認

根拠位置はPDFのページ番号だけでなく、Results、Table 2、Figure 1など、人があとで探せる情報を残します。一つの主張に複数資料を混ぜず、資料ごとに行を分けます。

7 AIへ確かめさせる七つのテクニック

Section titled “7 AIへ確かめさせる七つのテクニック”

1 作成したタスクとは別のタスクで確認する

Section titled “1 作成したタスクとは別のタスクで確認する”

同じ会話の続きで「正しいですか」と尋ねるのではなく、新しいWorkまたはCodexタスクへ、原稿、元資料、判定基準だけを渡します。

2 文章を改善させず、照合だけさせる

Section titled “2 文章を改善させず、照合だけさせる”
プロンプト例
このタスクでは文章を改善しないでください。
03_report/report-draft.mdの主張、数値、引用、参考文献を、01_sources内の元資料と照合してください。
各項目を次のいずれかに分類してください。
- 元資料で確認できた
- 表現が元資料より強い
- 数値、単位、対象が一致しない
- 元資料に見つからない
- 判断に追加資料が必要
結果を05_verification/verification-report.mdへ記録し、原稿は変更しないでください。

「正しさの確認」だけでなく、対象集団の違い、研究の限界、資料間の不一致、結論を弱める条件を探させます。

4 書誌情報を独立して照合する

Section titled “4 書誌情報を独立して照合する”

タイトル、著者、雑誌名、年、DOIまたはPMIDを組として確認します。識別情報が一致しない参考文献は完成扱いにしません。

割合、対象者数、期間、効果量などを抜き出し、本文、表、図と照合します。単位、分母、比較対象も並べます。

原論文が「関連した」と述べているのに、原稿が「原因である」と書いていないかなど、元資料より強い表現を探させます。

見つからない情報を補完させず、未確認一覧として残します。人が確認する順番として利用します。

第3章で作成したmedical-source-checkを、検証専用タスクで明示的に選びます。

プロンプト例
$medical-source-check
入力:
- 00_requirements/assignment.pdf
- 01_sources/paper.pdf
- 03_report/report-draft.md
今回は原稿を修正せず、照合結果だけを05_verificationへ保存してください。

Skillを使う利点は、医学知識が自動的に正しくなることではありません。別の課題でも次が抜けにくくなることです。

  • 書誌情報の確認
  • 根拠位置の記録
  • 数値と対象条件の照合
  • 相違と未確認事項の分離
  • 原稿を変更せず検証報告を先に作ること

実行後は、Skillを使わずに依頼した結果と比較します。重要な項目が抜ける、不要な場面でSkillが動く、資料不足を推測で埋める場合は、第3章の方法でdescriptionまたは手順を修正します。

自作Skillが表示されない環境でも、検証工程は中止しません。Skillは新しい検証能力を追加するものではなく、決めた照合順序を呼び出しやすくする保存形式です。第7節の確認項目を、保存した依頼文とチェックリストとして新しいWorkまたはCodexタスクへ渡します。

プロンプト例
この環境では自作Skillを利用できないため、保存済みの確認手順を実行してください。
入力:
- 00_requirements/assignment.pdf
- 01_sources/paper.pdf
- 03_report/report-draft.md
確認すること:
1. 書誌情報を原文と照合する
2. 原稿の主張と根拠位置を対応させる
3. 数値、単位、対象、比較条件を照合する
4. 相違と未確認事項を分離する
原稿は変更せず、結果だけを05_verification/verification-report.mdへ保存してください。

9 英語論文をレポートと発表へつなぐ

Section titled “9 英語論文をレポートと発表へつなぐ”

医学総合英語の課題では、翻訳結果をそのままスライドにしません。一度作った確認済みの分析ファイルを、レポートと発表で共用します。

図では読みやすさを優先して成果物名を短くしています。実際のファイル名と役割は、次の表で確認します。

中間成果物役割次に渡す先
paper-profile.md論文の目的、方法、対象、結果、限界Work、発表担当者
evidence-table.md主張と根拠位置を対応させるWork、検証タスク
verification-report.md相違と未確認事項を示す本人、修正用Work
report-draft.docxレポート原案Word、検証タスク
slides-outline.mdスライド構成と出典PowerPoint、Canva

レポートとスライドを別々に要約させるのではなく、同じpaper-profile.mdevidence-table.mdを使います。成果物間で数値や結論がずれた場合も照合しやすくなります。

10 うまくいかないときの切り分け

Section titled “10 うまくいかないときの切り分け”
問題原因として考えることやり直し方
情報源が広がりすぎる調査する問いと対象が曖昧research-brief.mdを先に固定する
出典はあるが原文を開けない調査報告だけを成果物にしているURL、DOI、PMIDから元資料を取得する
論文要約が一般論になる読む目的と出力ファイルが未指定課題の問いと根拠位置を指定する
表・図の数値がずれる単位、分母、対象、時点が落ちている数値だけを別表で照合する
検証で原稿が勝手に変わる制作と検証を同じ依頼にしている別タスクで「変更しない」と指定する
Skillが関係ない依頼でも動くdescriptionが広すぎる使う条件と使わない条件を絞る
Skillを選んでも手順が抜けるSKILL.mdの手順や出力が曖昧順序、成果物名、停止条件を明記する

ハンズオン 確認済み材料を作る

Section titled “ハンズオン 確認済み材料を作る”

この章では、レポート本文の完成を目標にしません。次の中間成果物を作ります。

  1. research-brief.md:課題から抽出した調査範囲
  2. source-register.md:候補資料と採否
  3. paper-profile.md:英語論文の構造と書誌情報
  4. evidence-table.md:主張と根拠位置の対応
  5. verification-report.md:相違と未確認事項

最後に、どの成果物をWorkへ渡し、どの資料は候補のまま除外するかを説明します。次章では、これらを使ってレポート、スライド、PDF提出までを一続きで実行します。

  • 課題要項から調べる問いを抽出できる
  • ウェブ検索、Deep Research、Work、Codexを調査規模で選べる
  • Deep Researchの調査計画を開始前に修正できる
  • ハルシネーションを、実在確認、原文確認、対応確認の三段階で検証できる
  • 調査報告と採用した元資料を区別できる
  • 論文PDFから書誌情報と根拠位置を記録できる
  • 原稿を作ったタスクとは別のタスクで検証できる
  • 相違、過剰表現、未確認事項を消さずに残せる
  • 第3章で作ったSkillを使い、結果を見て改善できる
  • 確認済みの分析ファイルをレポートとスライドへ共用できる

製品情報確認日: 2026-08-11

公式資料: