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第1章 ChatGPTの基本機能を学業で使いこなす

ChatGPTを使った経験があっても、利用方法が「質問を入力して、答えを読む」だけなら、使っているのは機能の一部です。

この章では、レポートやプレゼン制作へ進む前に、ChatGPTの基本となる機能と通常Chatの使い方を整理します。

  • ChatGPTの中にあるChat、ウェブ検索、Deep Research、Work、Codexの違い
  • 通常Chatが向いている作業
  • 一度の完璧なプロンプトより、対話で結果を育てる方法
  • PDF、Word、画像、課題要項などを資料として渡す方法
  • 学習済み知識による回答と、Web検索を使った回答の違い
  • AIのハルシネーション、前提、推測、未確認事項を見分ける方法
  • AIへ調査、構成、原案、共同編集、校正、評価、成果物化まで任せる方法
  • 自分の環境で利用できる機能と代替経路

ChatGPTは、同じ入力欄から複数の機能や作業方法を利用できる環境です。何を頼むかによって、選ぶものが変わります。

機能・作業方法主な役割大学課題での使用例
Chat質問、相談、短い作成・修正用語確認、要約、見出し相談、部分的な推敲
ウェブ検索現在のWeb情報を素早く確認公式ページ、制度、直近の情報を出典付きで探す
ファイル・画像入力手元の資料を会話の材料にする課題要項、論文PDF、表、図、スクリーンショットを読ませる
Projects関連するチャット、資料、共通指示をまとめる授業または大きな課題の作業場所を作る
Deep Research複数の情報源を計画的に調査・統合するガイドラインや論文を比較し、出典付き調査報告を作る
Work複数工程を進めて確認可能な成果物を作るレポート、スライド、表、PDFを作成・修正する
Local Work・CodexPC上のフォルダとファイルを扱う過去資料を参照し、Word、PDF、PowerPointを継続的に管理する
Voice・音声入力考えや修正指示を話して入力する本人の意見、長い条件、成果物への違和感を伝える

この章では、すべての土台となる通常Chatを中心にします。Deep ResearchとWorkは第2章、Codexは第3章で詳しく扱います。

同じ入力欄から始めても、目的に応じて使う機能が変わります。通常Chatは、次の工程を決める案内役にもなります。

製品情報確認日: 2026-08-10

通常Chatは、回答を一回受け取って終わる検索窓ではありません。会話の中で資料と条件を追加しながら、考えを整理する作業場所です。

知らない用語を尋ねるだけでなく、理解度や目的を指定できます。

プロンプト例
「交絡因子」を、医学統計を学び始めた学生向けに説明してください。
条件:
- 定義
- 医療分野の短い例
- 交絡と因果を混同しやすい理由
- 最後に理解確認の質問を1問

テーマの候補、比較する観点、疑問点を出させます。ここでは正解を受け取るより、考える材料を増やすことが目的です。

プロンプト例
高血圧の患者説明という課題について、
医学知識のない患者が疑問に思いそうな点を10個挙げてください。
まだ回答文は作らず、
「病気」「検査」「生活」「治療」の4分類に分けてください。

要約、言い換え、対象者の変更、表への変換など、範囲が明確な作業はChatに向いています。

  • 講義メモを箇条書きへ変える
  • 一段落を患者向けの表現へ直す
  • 英文の要点を日本語で整理する
  • 二つの説明案を比較する
  • 発表原稿を短くする

すぐにレポートを書かせず、課題要項から必要な条件や不足資料を整理する用途にも使えます。

プロンプト例
添付した課題要項を確認してください。
まだレポートは書かず、次を分けてください。
- 必須条件
- 提出形式
- 評価される項目
- 私が決める必要があること
- 現在不足している資料

この整理結果を使って、Deep ResearchやWorkへ渡す依頼を準備できます。

AIに任せられるレポート制作の全工程

Section titled “AIに任せられるレポート制作の全工程”

AIは、レポート制作の一部分だけでなく、材料探しから提出形式への変換まで担当できます。学生向けの課題でも、利用できる範囲を最初から狭く決める必要はありません。課題要項や学校の明示的な条件を確認したうえで、任せられる工程はAIへ任せ、本人は目的、採否、確認、最終判断に集中するという使い方ができます。

学校から示された「AIの丸写しは不可」は、AIを使わないという意味ではありません。少なくとも、生成結果を未確認のまま提出せず、根拠、課題条件、本人の意図との一致を確認する必要があります。AI利用や本文生成の範囲が別に指定されている場合は、その条件に合わせます。

工程AIへ任せられること利用者が確認・判断すること主な道具
材料探し検索語、調査観点、資料候補、追加で調べる問いを出す採用する情報源と調査範囲Chat、ウェブ検索、Deep Research
資料整理論文や配布資料を要約・比較し、根拠表を作る原典との一致と使う材料Deep Research、NotebookLM、Work
構成設計論点を整理し、複数の構成案と不足資料を示すレポートの目的と採用する構成Chat、Work
原案生成条件、資料、本人メモからレポート原案を作る主張、根拠、表現が意図に合うかWork、Codex
共同編集節の追加、削除、言い換え、文字数調整、版管理を行う変更範囲と採用する修正Work、Codex、Word
校正・検証誤字、用語、論理、数値、引用、根拠の問題を指摘する元資料へ戻って確認する項目Chat、別Work、Codex、Word
模擬評価課題要項やルーブリックと成果物を照合する指摘への対応と提出判断Chat、別Work、Codex
成果物化Word、PDF、スライド、発表原稿を生成・変換するファイル表示と提出条件Work、Codex、PowerPoint、Canva

任せ方は三つの経路から選べる

Section titled “任せ方は三つの経路から選べる”

AIへ任せる量に、全員共通の正解はありません。課題、研究、業務の条件と、利用者が確保したい時間や学習内容に合わせて選びます。

経路AIの担当利用者の担当向いている状況
全工程を任せる調査、構成、原案、修正、校正、ファイル生成まで進める目的、資料の採否、確認地点、最終承認を決めるAI利用が認められ、短時間で成果物を作りたい
共同制作する構成や原案を作り、本人の意見を受けて反復修正する独自の観点、授業内容、違和感、修正方針を加える学生レポート、研究メモ、提案書を対話で育てたい
部分支援を使う材料探し、構成相談、校正、模擬評価だけを行う草稿を作り、必要な支援だけ選ぶ本文生成に制限がある、または執筆練習を残したい

どの経路でも、途中で切り替えられます。最初は全工程を任せて構成を理解し、本人の観点を加えて共同制作へ移ることも、本人草稿から始めて一部の節だけAIへ作り直させることもできます。

すべての工程をAIへ任せる場合も、各工程で利用者が確認地点を置きます。本人の役割は、必ず全文を手で書くことに限定されません。何を作るかを決め、AIへ条件を渡し、出力を確かめ、採用または修正を判断することも重要な作業です。

材料探し――答えより検索経路を受け取る

Section titled “材料探し――答えより検索経路を受け取る”

材料探しでは、AIの説明をそのまま参考文献にせず、検索語と資料候補を受け取って原典へ進みます。

プロンプト例
「2型糖尿病の患者説明」というレポート課題の材料を探します。
まだ説明文やレポート本文は書かず、次を示してください。
- 調べる観点
- 日本語と英語の検索語
- 優先して確認する公的機関・専門学会・論文データベース
- 資料候補ごとに確認すべき内容
- 現時点で不足している課題条件
実在を確認できない文献名は作らないでください。

複数資料を広く比較する場合はDeep Research、指定された論文を読む場合はファイル入力やNotebookLM、現在の公式情報を少数確認する場合はウェブ検索が向きます。

構成相談――本人の考えを聞いてから案を出させる

Section titled “構成相談――本人の考えを聞いてから案を出させる”

テーマだけを渡して構成を決めさせるのではなく、AIに質問役を任せ、本人が何を伝えたいかを先に言葉にします。

プロンプト例
私がこのレポートで伝えたいことを整理したいです。
必要なことを一度に聞かず、一問ずつ質問してください。
回答がそろったら、私の考えを勝手に補わず、構成案を3案示してください。
各案について、次を比較してください。
- 中心となる主張
- 各節の役割
- 分かりやすい点
- 不足している論点
- 追加で必要な資料
本文の段落はまだ作成しないでください。

構成案は正解ではなく選択肢です。本人が案を選び、組み替え、採用しない理由まで考えます。構成が固まったら、そのままWorkへ渡して原案生成まで進められます。

原案生成――資料と本人の視点を分けて渡す

Section titled “原案生成――資料と本人の視点を分けて渡す”

AIへ原案を任せるときは、テーマだけでなく、課題条件、採用資料、本人の観点、出力形式を分けて渡します。

プロンプト例
確認済みの課題条件、構成案、採用資料、本人メモを使って、
レポート原案を作成してください。
条件:
- 構成案の見出し順を守る
- 医学的な主張は採用資料の範囲に限定する
- 本人メモは本人の観点として反映する
- 数値と引用には資料名と該当箇所を付ける
- 確認できない内容は補わず「未確認」と残す
- 後からWordで編集できる形式にする
完成後に、使用した資料、AIが補った接続表現、
利用者が確認すべき箇所を一覧にしてください。

最初の原案を完成品と考えず、構成、根拠、本人の意図を確認して共同編集へ進みます。

共同編集――残す場所と変える場所を伝える

Section titled “共同編集――残す場所と変える場所を伝える”

AIが作った原案へ本人の観点を加える場合も、AIに直接修正させられます。文書全体を作り直すのではなく、変更範囲と維持する条件を同時に渡します。

プロンプト例
レポート原案を共同編集します。
変更すること:
- 第2節に、本人メモの「症状がなくても確認が必要だと感じた理由」を反映する
- 専門用語には短い説明を付ける
- 全体を指定文字数へ収める
変更しないこと:
- 採用済みの数値と引用
- 第1節の構成
- 参考文献一覧
修正版を別ファイルとして作り、変更箇所と変更理由を一覧にしてください。

本人の考えも、AIが生成した文章も、修正の材料としてファイルやメモへ残せます。これにより、最初から書き直さず、AIと反復して完成度を上げられます。

校正――問題発見と直接修正を使い分ける

Section titled “校正――問題発見と直接修正を使い分ける”

「きれいな文章にして」だけでは、残したい主張や引用まで変わることがあります。まず指摘表を受け取る方法と、変更範囲を指定して直接修正させる方法を使い分けます。

プロンプト例
添付した文章は私が書いたレポート草稿です。
本文を直接書き直さず、次の観点で校正してください。
- 誤字脱字
- 用語と表記の不統一
- 一文が長く読みにくい箇所
- 主語や指示語が曖昧な箇所
- 根拠が不足して見える主張
- 前後の論理が飛んでいる箇所
「該当箇所/問題の種類/理由/修正の方向」の表にしてください。
数値、引用、参考文献は変更しないでください。

指摘を確認した後、必要な箇所だけを本人が直すか、変更範囲を限定して修正案を出させます。校正と医学的事実の確認は別の作業です。

模擬評価――点数ではなく評価基準との不足を探す

Section titled “模擬評価――点数ではなく評価基準との不足を探す”

AIは教員ではなく、正式な採点者でもありません。模擬評価では点数を予想させず、課題要項と評価基準に照らした提出前チェックをさせます。

プロンプト例
課題要項、評価基準、私が書いたレポート草稿を確認してください。
本文は変更せず、評価項目ごとに次を表で示してください。
- 満たしている
- 不足している
- 資料からは判断できない
- そう判断した草稿中の箇所
- 学生本人が確認すべき質問
点数や合否は付けないでください。
評価基準に書かれていない条件を追加しないでください。

作成を支援した会話とは別のChatやWorkで確認すると、同じ前提をそのまま肯定する可能性を減らせます。ただし、別タスクにしても正しさが保証されるわけではありません。最終判断は課題要項と元資料に戻って行います。

一度で完成させず、対話で育てる

Section titled “一度で完成させず、対話で育てる”

良い結果を得るために、最初から長大で完璧なプロンプトを書く必要はありません。

最初の依頼
AIの理解と仮定を確認
不足資料や条件を追加
構成や候補を比較
必要な範囲だけ修正

回答の文章表現だけでなく、AIが何を前提にしたかを確認します。

プロンプト例
この回答について、次を示してください。
- 私が明示した条件
- あなたが仮定した条件
- 資料から確認できた事実
- 資料からは確認できない内容
- 追加で確認すべきこと

「もっと良くして」だけでは、残したい部分まで変更されることがあります。

プロンプト例
第2段落だけを修正してください。
変更すること:
- 専門用語を初学者向けに説明する
- 一文を短くする
変更しないこと:
- 数値
- 引用
- 第1段落と第3段落

一つの回答を何度も直すより、方針の異なる案を並べたほうが選びやすい場合があります。

プロンプト例
この説明について、次の3案を作ってください。
1. 正確さを優先した案
2. 患者の分かりやすさを優先した案
3. 1分で説明できる短い案
最後に、各案の利点と不足を表にしてください。

プロンプトは短く始め、必要な条件を足す

Section titled “プロンプトは短く始め、必要な条件を足す”

プロンプトは決まった呪文ではありません。結果を変える条件を必要な分だけ伝えます。

要素伝えること
目的何のために、何をしてほしいか発表準備のために論文の要点を整理する
文脈使用資料、対象者、前提添付論文、医学科1年生、5分発表
出力形式、長さ、構成表、400字、見出し付き
境界変えないこと、避けること、確認地点論文外の情報を足さない、不明点は残す

すべてを毎回書く必要はありません。簡単な質問なら目的だけで十分です。重要な課題やファイル作成では、文脈、出力、境界を増やします。

この表を毎回埋める必要もありません。以下のプロンプト例は、コピーして使う唯一の正解ではなく、AIへこんな仕事まで頼めることを示す例です。

プロンプト例
この課題、うまく依頼できていない気がします。
必要なことを一つずつ質問して、最後に使いやすい依頼文へまとめてください。
プロンプト例
この論文の研究目的を一文で説明してください。

回答が広すぎたら、条件を追加します。

医学科1年生が発表の導入で使える日本語にしてください。
論文本文に書かれていない目的は補わないでください。

依頼条件が固まっていない場合は、推測で進めさせず、必要な質問だけを出させます。

プロンプト例
この課題の発表スライドを作りたいです。
まだ作成を始めず、結果を大きく変える確認事項を最大5問質問してください。
課題要項から分かることは質問しないでください。

これは、本人の要望がまだ曖昧な課題や、グループ発表の準備にも使えます。

ファイルは「添付した」だけでは足りない

Section titled “ファイルは「添付した」だけでは足りない”

ChatGPTは、文書、プレゼン、表計算、PDF、画像などを会話の資料として利用できます。ただし、資料を何のために使うかは利用者が指定します。

資料の役割Chatへの伝え方
課題条件課題要項、評価基準必ず満たす条件として読む
事実の根拠論文、配布資料、ガイドライン主張や数値の根拠にする
本人の考え授業メモ、疑問、意見本人の観点として区別する
形式の見本学校テンプレート、過去の様式構成と書式だけを参考にする
確認対象原案、スライド、スクリーンショット誤りや不足を探す対象にする
プロンプト例
次の3種類の資料を添付しました。
- 課題要項.pdf:必須条件として扱う
- 高血圧資料.pdf:医学的な説明の根拠として扱う
- 自分のメモ.docx:私の疑問と考えとして扱う
まだ本文は作らず、各資料から使える内容と不足を整理してください。
資料間に矛盾があれば、どちらかを選ばずに示してください。

過去レポートは、構成や分量の参考にはできます。しかし、過去レポート内の医学情報を、新しい課題の根拠として自動的に扱わせません。

画像とスクリーンショットを使う

Section titled “画像とスクリーンショットを使う”

ChatGPTには、図、表、PowerPoint画面、エラーメッセージなどの画像も渡せます。

画像を添付するときは、確認してほしい場所を言葉でも指定します。

プロンプト例
添付画像は、作成中のスライド3枚目です。
次を確認してください。
- 図と本文の説明が一致しているか
- 文字が多すぎないか
- 初めて見る人が迷う用語
デザイン全体は変更せず、改善点だけを挙げてください。

画像から読み取った数値や細かな文字は誤認識する可能性があります。重要な数値は元の表や文書でも確認します。

Chatの回答とウェブ検索を使い分ける

Section titled “Chatの回答とウェブ検索を使い分ける”

通常Chatが常にWebを調べるとは限りません。制度、料金、製品機能、最新の医学情報など、時期によって変わる内容はChatGPTのウェブ検索を使います。画面では地球儀のアイコンと「ウェブ検索」と表示されます。本教材でいうウェブ検索は、ChatやWorkと並ぶ独立したAIサービス名ではなく、ChatGPTがWeb上の情報を探して出典付きで答える機能です。

状況選ぶもの受け取るもの
用語や基本概念を理解したいChat説明、例、比較
現在の公式情報を一件確認したいウェブ検索短い回答、出典リンク
複数の資料を広く比較したいDeep Research調査計画、詳細報告、情報源一覧
調査材料から提出物を作りたいWorkレポート、スライドなどの成果物
プロンプト例
高血圧の患者向け説明資料を作る前に、
現在公開されている公的機関または専門学会の資料を探してください。
この段階では説明文を作らず、
資料名、発行主体、更新年、URL、使えそうな項目を表にしてください。

出典リンクが付いていても、リンク先が主張を実際に裏付けているとは限りません。重要な内容は元ページを開いて確認します。

生成AIは、確認できない内容についても、実在するように見える人名、論文名、判例、日付、数値、引用、URL、DOI、PMIDなどを組み立てることがあります。この現象をハルシネーションと呼びます。

文章が流暢で、断定的で、出典らしい表記が付いていても、正しさの保証にはなりません。ウェブ検索やDeep Researchを使った場合も、リンク先が存在することと、そのリンク先が回答の主張を裏付けていることは別々に確認します。

この事例では、弁護士がChatGPTへ判例は本物かと尋ね直したところ、ChatGPTは実在すると回答しました。同じAIへ「本当ですか」と再質問することは、外部資料との照合にはなりません。

AIに「本当ですか」と聞き直す
≠ 元資料による事実確認
事実確認
= 実在確認 + 原文確認 + 今回の主張との対応確認

AIには、確認対象の一覧化、検索語の提案、原文との比較を任せられます。ただし、重要な情報の確認先は、AIの返答ではなく、授業指定資料、公的機関、論文原文、公式データベースなどの外部資料です。

同じ機能でもコンテキストで回答が変わる

Section titled “同じ機能でもコンテキストで回答が変わる”

AIの回答は、入力した一文だけでは決まりません。

回答 = 選んだ機能 × 今回の指示 × コンテキスト × 参照情報

ここでいうコンテキストには、同じChatの会話履歴、保存メモリ、カスタム指示、Project instructions、ProjectのSourcesなどが含まれます。新しいChatを作っても、利用中のメモリやProjectの設定によっては、完全な白紙から始まるとは限りません。

実機例 短い検索で目的まで補われた

Section titled “実機例 短い検索で目的まで補われた”

次の例では、新しいChatで「2型糖尿病」とだけ入力してウェブ検索しました。回答は患者向け資料として構成されました。直前まで扱っていた患者説明の文脈や保存メモリが影響した可能性はありますが、この画面だけで原因を一つに断定することはできません。

実機画面(スクリーンショット) 確認日 2026-08-10
短いウェブ検索が患者向け資料として構成された回答
図1-1 短い指示では、AIが利用可能なコンテキストから目的や対象読者を補う場合があります。

実機例 目的と出力形式を指定した

Section titled “実機例 目的と出力形式を指定した”

同じ題材で、過去の目的を前提にしないこと、患者向け文章へ加工しないこと、情報源3件と出典リンクだけを示すことを指定すると、回答は情報源を比較する表へ変わりました。

実機画面(スクリーンショット) 確認日 2026-08-10
目的と出力形式を指定したウェブ検索の回答
図1-2 同じウェブ検索でも、目的、対象、出力形式を指定すると成果物の形が変わります。

プロンプトへ「過去の会話を前提にしない」と書くことは、メモリ設定そのものを無効にする操作ではありません。厳密に比較するときは、Projectの外で実施する、メモリ設定を確認する、同じ質問と同じ出力条件を使うなど、比較条件をそろえます。

一つの長いChatへ、別々の課題や成果物を追加し続けると、以前の条件が混ざりやすくなります。

  • 同じ文章の要約と修正
  • 同じ課題の条件整理
  • 同じ資料についての追加質問
  • 直前の回答を使った比較
  • 別の授業や別の課題
  • レポート作成と独立した根拠検証
  • レポートとスライドのように成果物が異なる作業
  • 過去の条件を引き継ぎたくない作業

複数のChatで同じ資料や共通条件を使う場合は、Projectへまとめます。Projectの設計は第2章で扱います。

Chatの結果を受け取る前に確認方法を決める

Section titled “Chatの結果を受け取る前に確認方法を決める”

読みやすく断定的な文章でも、内容が正しいとは限りません。重要な課題では、回答と一緒に確認材料を作らせます。

回答の最後に、次を追加してください。
- 使用した資料
- 各資料を使った箇所
- 推測を含む箇所
- 確認できなかったこと
- 私が元資料を確認すべき重要項目

特に確認するものは次のとおりです。

  • 人名、薬剤名、数値、日付
  • 引用文と出典
  • DOI、PMID、論文名、著者名
  • 対象集団と研究条件
  • 課題要項の分量、形式、提出条件
  • AIが資料へアクセスできなかった箇所

AIの回答をそのまま信頼するのではなく、どこを確認すれば使える材料になるかをAI自身に整理させるのが基本です。

通常Chatで相談を始めても、作業が大きくなったら適切な機能へ移ります。

Chatで課題と条件を整理
情報源を一件探すならウェブ検索
複数資料を調べるならDeep Research
提出物を作るならWork
PC上のファイルを継続管理するならLocal Work・Codex

Chatで作った条件整理や調査依頼文は、Deep ResearchやWorkへそのまま渡せます。Chatを使った準備は無駄になりません。

この講座では、中心となるAIにChatGPTの有料個人プランを推奨します。通常Chatに加え、Projects、Deep Research、Work、Codexなどを一つの環境で比較しやすいためです。

ただし、プラン名、利用上限、表示される機能は変わります。契約画面と実際のアカウントで当日の内容を確認します。

生成AIは、文章を返す点だけを見ると似ています。しかし、情報源、扱える資料、成果物、学校環境との連携、ファイル管理に違いがあります。

サービス大学課題での特徴向いている場面
ChatGPTChat、ウェブ検索、Deep Research、Projects、Work、Codexを使い分けられる調査から成果物制作まで一つの環境で試す
ClaudeProjects、Research、Artifactsで複数資料と長い内容を扱える論文や長い資料の読解、文章案の比較
GeminiGoogle検索やDriveを利用でき、Deep ResearchやCanvasを扱えるGoogle環境での調査・文書・スライド制作
NotebookLM登録した資料を中心に回答し、引用や学習資料を作れる指定論文・配布資料の範囲を限定した読解
Microsoft CopilotWord、PowerPointなどMicrosoft 365の中で作業できる学校のOffice・Teamsに近い制作工程
CanvaAIとテンプレートで視覚的なプレゼン案を作れる確認済み内容のデザイン・共同編集

最も優れたAIを一つ決めるのではなく、次の五つを確認します。

  1. 学校ではWord、PowerPoint、Google Drive、Teamsのどれを使うか
  2. Webを広く探すのか、指定資料だけを読むのか
  3. 回答、調査報告、Word、スライド、PDFのどれが必要か
  4. 一回で終わるか、複数タスクとファイルを管理するか
  5. 利用できるプラン、回数、学校の管理設定はどうなっているか

Googleのエージェント環境であるAntigravityは、Codexと比較する発展項目です。詳しくは第3章で扱います。

選ぶ機能に迷ったら、AIに選択肢を出させる

Section titled “選ぶ機能に迷ったら、AIに選択肢を出させる”

比較表を暗記する必要はありません。目の前の課題、手元の資料、必要な成果物をChatへ説明し、候補を出させます。Deep ResearchとWorkの詳しい違いは第2章で扱います。

プロンプト例
次の課題を、できるだけ少ない機能で進めたいです。
手元にあるもの:
- 課題要項PDF
- 指定された英語論文2本
- 自分のメモ
必要なもの:
- Wordレポート
- PowerPoint
- 提出用PDF
Chat、ウェブ検索、Deep Research、Work、Codexのうち、
必要なものだけを選んでください。
各機能で渡す資料、入力する依頼、受け取る成果物も示してください。

提案された構成が大きすぎれば、「今回は論文が指定済みなので調査は省けないか」「Workだけで進める案も示して」と続けます。機能選択も、一回で決めるのではなくAIと相談できます。

研修開始前に、個々の機能を操作できる必要はありません。Project、Deep Research、Work、Codexなどは、該当する章で画面を確認しながら扱います。ここでは、使用する環境の位置付けだけを確認します。

環境この研修での位置付け
ChatGPTPlus以上を推奨前提とする。Freeよりモデル・ファイル・Deep Researchなどの利用範囲が広いが、Plusでも機能の提供状況や利用回数には制約がある
Microsoft 365Word、PowerPoint、PDFを成果物の確認と仕上げに使う。PowerPointのCopilotは有用だが、契約や学校設定によって表示されないため必須にしない
Canvaスライドのデザインと共同編集を試したい場合の選択肢。今回の研修では必須にしない
TypeLess必須ではないが、長い依頼や本人の考えを話して入力する用途に勧める。研修での体験はFreeプランの範囲で進められる

開始時点では、ChatGPTへサインインでき、WordとPowerPointを開ければ研修を始められます。任意ツールは、該当章で必要になった時点で準備できます。

プランと利用上限は変更されるため、研修実施時にChatGPT Plusの公式案内TypeLessの料金・Freeプランを確認します。

AI製品は、契約、地域、管理設定、段階的な提供によって画面が異なります。特定の機能が表示されなくても、研修全体を中止する必要はありません。

必要な作業代替方法
調査ウェブ検索、通常のブラウザ、手元の資料を組み合わせる
レポート・ファイル制作利用できるChat、Work、CodexとWordを組み合わせる
スライド制作Work、Codex、通常のPowerPoint、Canvaの使えるものを選ぶ
音声入力TypeLess、ChatGPT Voice、Windows音声入力から選ぶ

代替方法の具体的な選び方は、各ツールを扱う章で説明します。

ミニ演習 通常Chatを一段深く使う

Section titled “ミニ演習 通常Chatを一段深く使う”

架空の患者説明課題を使い、次を順に試します。

  1. 課題要項から必須条件を抽出させる
  2. 配布資料と本人メモの役割を指定する
  3. 不足情報とAIの仮定を示させる
  4. 説明方針を3案比較させる
  5. 一段落だけを対象者に合わせて修正させる
  6. 現在の情報が必要な一点だけをウェブ検索で確認する
  7. 大規模な調査と成果物作成は、次章へ引き継ぐ

確認するのは、文章のうまさだけではありません。

  • Chatが資料の役割を区別できたか
  • 課題要項にない条件を勝手に補っていないか
  • 修正範囲を守れたか
  • ウェブ検索の出典を開いて確認できたか
  • Chatで続けるか、別機能へ移るか判断できたか
  • ChatGPTは通常Chatだけでなく、ウェブ検索、ファイル、Projects、Deep Research、Work、Codexなどを含む環境です。
  • Chatは、質問、相談、要約、比較、短い作成・修正、大きな仕事の条件整理に向いています。
  • 最初から完璧なプロンプトを作らず、回答を確認して条件と資料を追加します。
  • プロンプトは目的、文脈、出力、境界の必要な部分だけを伝えます。
  • ファイルを添付するときは、課題条件、根拠、本人の考え、形式見本などの役割を指定します。
  • AIには、調査、資料整理、構成、原案生成、共同編集、校正、模擬評価、Word・PDF化まで任せられます。
  • 全工程、共同制作、部分支援のどれを使うかは、明示された条件と目的に応じて利用者が選びます。
  • 現在の情報を短く確認するならウェブ検索、複数資料の調査はDeep Researchを選びます。
  • レポートやスライドを完成させる仕事はWorkへ、ローカルファイルを扱う仕事はLocal Work・Codexへ移します。
  • AIはもっともらしい誤情報を作ることがあり、同じAIへの再質問だけでは検証になりません。
  • AIの回答では、使用資料、仮定、未確認事項、元資料を確認すべき箇所を表に出させます。

公式資料: