第3章 Work に目標を渡す
この章の目的
Section titled “この章の目的”第2章の終わりで、Chat では足りなくなる場面を5つ挙げました。工程が続く。成果物が1つずつになる。 資料が多い。時間がかかる。前回の続きができない。
Work は、そこを引き受ける道具です。目標を渡すと、材料を集め、手順を実行し、成果物まで作ります。
ただ、渡し方によって、返ってくるものがかなり違います。この章では、同じ課題を渡し方だけ変えて 3回走らせた記録を見ていきます。
この章でできるようになること
Section titled “この章でできるようになること”- 何も指定しないと Work がどう動くかを説明できる
- 計画を先に出させ、確認させる指示を書ける
- 渡した条件が、計画のどこに現れるかを読める
- 用途を伝えて、成果物の形を用途に合わせられる
- 条件どうしが引っ張り合っていることに気づける
この章でやること
Section titled “この章でやること”第1章で挙げた例を使います。2型糖尿病について、患者さんに渡す説明資料を作る課題です。
第2章では、同じことを2通りで聞き比べました。ここでは同じやり方を Work で3回やります。
同じ課題を、渡すものだけ変えて3回走らせました。指示の言い回しを磨いたのではありません。 何を渡し、何を渡さなかったかを変えただけです。
| 1回目 | 2回目 | 3回目 | |
|---|---|---|---|
| 渡したもの | 一行だけ | 4点セット | 4点セット+用途 |
| 計画を先に出す | 出さない | 出して停止 | 出して停止 |
| 出力の形 | Word | 画面のテキスト | Word |
| 見た目 | 章立て・表・色分け | 素のテキスト | 見出し番号・図・表 |
| 分量 | 7ページ | 約1,500字 | 実質2ページ |
| 出典 | 機関名のみ | 版・リンクまで | 版・リンクまで |
| 時間 | 9分40秒 | 2分45秒 | 約13分 |
順に見ていきます。
1回目 — 何も指定せずに投げてみた
Section titled “1回目 — 何も指定せずに投げてみた”渡したのは、これだけです。
2型糖尿病について、患者さん向けの説明レポートを作ってください。確認は一度もありませんでした。そのまま調べ始め、書き始め、9分40秒後に7ページの Word 文書が できていました。
途中の報告に、こんな一節がありました。
全ページを画像として確認し、文字切れ、表の崩れ、改ページ、読みやすさを点検します。
頼んでいない確認工程を、自分で回しています。
出来上がったものは、章立てがあり、表が入り、色分けされていました。患者さんに配る資料としては、 よくできています。
ここで分かるのは、ざっくり渡すと雑になるわけではない、ということです。 指定がないぶん、道具は自分の既定で動きます。それが良い結果になることもあります。
2回目 — 4点セットを渡して、計画を出させた
Section titled “2回目 — 4点セットを渡して、計画を出させた”第1章の4点セットを渡し、最後に一行を足しました。
まず作業計画を提案してください。実行は、計画を確認してからにします。今度は、計画を出していったん止まり、承認を待ちました。
止まるかどうかは、道具の仕様ではなく、こちらの指示で決まります。 「勝手に進んでしまう」と感じるなら、止める指示を書いていないだけです。
渡した条件は、計画のどこに現れたか
Section titled “渡した条件は、計画のどこに現れたか”返ってきた計画を、渡したものと突き合わせると、一つずつ対応していました。
| 渡したもの | 計画に現れた形 |
|---|---|
| 出典が確認できる資料だけを使う | 「発行元、版・更新年、本文を確認できるURLが明確な資料に限定」 |
| 1,600字・出典を明記 | 「約1,600字の本文を構成」「出典一覧は別枠」「文字数とURLの有効性を確認」 |
| 資料にないことは書かない | 「資料にない説明は加えない」「確認できない点は推測せず『資料では確認できない』と明記」 |
| どこまで強く勧めるかは人が判断 | 「根拠以上に強い表現は使わない」 |
| 読み手は52歳・専門知識なし | 「読み手に合わせて表現を調整する」という工程そのもの |
とくに確認基準が効いています。1回目には無かった「完成前に検証する」という工程が、 2回目の計画には丸ごと現れました。一文ずつ出典と突き合わせる。断定していないか確認する。 URLが生きているか確認する。
渡した確認基準は、そのまま検証工程になります。
ところが、読みにくいものが返ってきた
Section titled “ところが、読みにくいものが返ってきた”2回目の成果物は、画面上のテキストでした。章立てもなく、素のテキストが並ぶだけです。 1回目より読みづらいものになりました。
原因は、渡した完成条件にあります。成果物の形を、一言も書いていませんでした。 「1,600字程度」「出典を明記」としか言っていません。1,600字のテキストとして、素直に返ってきた わけです。
1回目が Word になったのは、指定がなく、道具の既定が働いたからでした。2回目はこちらが枠を 与えたので、その枠に収まりました。
書いたことは守られます。そして、書かなかったことは失われます。
3回目 — 用途を書き足した
Section titled “3回目 — 用途を書き足した”2回目の条件に、次の一行を足しました。
成果物の形: 患者さんに紙で渡す配布資料。Word文書として作成し、章立てと図表を使って読みやすく整えること。Word 文書として出力され、図と表が入り、読みやすくなりました。出典の書き方も、 2回目と同等以上に整理されていました。
形式を指定したから、というより、「患者さんに紙で渡す配布資料」という用途を伝えたことが 効いたのだと思います。用途が分かれば、形式も、出典の見せ方も、そこから決まります。
形式に良し悪しはない
Section titled “形式に良し悪しはない”ここを取り違えないでください。1回目の説明書のようなレイアウトは、患者さんへの配布資料としては 良いものです。ただし、大学に提出するレポートとしては不適切です。指定書式があるなら従うべきで、 色分けや装飾は邪魔になります。
同じ出力が、用途が変われば失敗になります。
だから伝えるべきは「きれいにして」ではありません。何で開き、誰に渡し、何のためのものかです。
どんな形で出せるか
Section titled “どんな形で出せるか”3回の記録に出てきたのは、Word 文書と、画面のテキストの2つです。
| 形 | この3回で出たか | 使いどころ |
|---|---|---|
| Word 文書 | 1回目・3回目 | 提出物、配布資料。手元で直して仕上げる |
| 画面のテキスト | 2回目 | 中身だけ確かめたいとき。そのまま貼って使う |
| スライド | 出ていない | 発表資料。第7章で扱います |
| シート | 出ていない | 表の形で整理したいとき |
下の2つは、公式の説明では作れることになっています。ただし、この3回では出ていません。
シートについては、第2章で見たとおり、通常の Chat で Excel ファイルを作れることを別に確かめて います。Work でも同じように出せるかは、実際の画面で確かめてください。
PDF は、Work から直接ではなく、Word や PowerPoint にしてから書き出すのが確実です。 提出形式が PDF なら、そこまでを第7章で通します。
用途を書くか、形式を直接書くか
Section titled “用途を書くか、形式を直接書くか”3回目で効いたのは「患者さんに紙で渡す配布資料」という用途でした。用途が決まれば、形式も、 出典の見せ方も、そこから決まります。
一方、提出形式が課題で決まっているなら、用途から遠回りする必要はありません。 「Word 文書として作成」と直接書きます。
- 形式が決まっている → 直接書く
- 決まっていない、迷う → 用途を書き、形式は向こうに選ばせる
- どちらも言える → 両方書く。用途と形式は打ち消し合いません
ただし、打ち消し合う条件もあります。次がその例です。
字数を決めたら、2ページで終わった
Section titled “字数を決めたら、2ページで終わった”3回目は形式を指定したのに、実質2ページにとどまりました。何も指定しなかった1回目は7ページです。
差は「1,600字程度」という条件にあります。「読みやすい配布資料にする」と「1,600字程度」は 引っ張り合います。字数を締めれば、図表を入れても厚みは出ません。
完成条件は、多いほど良いわけではありません。とくに分量の指定は、他の条件を押さえ込みます。
- 分量は、課題で決まっているときだけ書く
- 決まっていないなら、書かないほうがよい結果になることがある
- 書くなら、他の条件と引っ張り合っていないかを確かめる
計画にあった確認は、本当に行われたのか
Section titled “計画にあった確認は、本当に行われたのか”2回目の計画には「完成前に検証する」という工程が並んでいました。一文ずつ出典と対応を確認し、 URLの有効性まで見る、という内容です。それで所要時間は2分45秒でした。
1回目は、検証(全ページの画像化、レイアウト点検)に時間を使い、9分40秒かかっています。
計画は読んで確認できます。ただ、実行されたかどうかは成果物でしか分かりません。 計画に検証工程が並んでいるのを見て安心しないでください。第4章で、成果物を確かめる側を扱います。
同じ課題を2通りで走らせ、渡すものの違いで結果がどう変わるかを自分で確かめます。
AIへ担当させる仕事
Section titled “AIへ担当させる仕事”レポートまたは資料の作成。1回目はざっくり、2回目は4点セットと用途を渡します。
用意する資料
Section titled “用意する資料”第1章で4点セットに整理した、自分の課題。
求める成果物
Section titled “求める成果物”- 1回目(ざっくり)の出力
- 2回目(4点セット+用途)の出力
- 2つの違いを書き出したメモ(形式・分量・出典・所要時間)
- 2回目に「まず作業計画を提案してください」を入れ、計画が出てくることを確認した
- 2回目に用途(何で開き、誰に渡すか)を書いた
- 違いを、印象ではなく観察できる項目(形式・分量・出典・時間)で書き出した
学生が確認するポイント
Section titled “学生が確認するポイント”- 1回目で、頼んでいない工程を自分で回していなかったか
- 2回目の計画に、渡した条件がどう現れたか
- 2回目のほうが読みづらくなっていないか。なっていれば、用途の伝え方が足りていません
次のタスクへ渡す情報
Section titled “次のタスクへ渡す情報”2回目の出力と、違いのメモ。次章以降で使います。
困ったときにAIへ相談する観点
Section titled “困ったときにAIへ相談する観点”同じ課題を2通りで実行しましたが、結果の違いの理由が分かりません。1回目に渡したもの: 【指示】2回目に渡したもの: 【指示】それぞれの結果: 【観察したこと】
どの指示が、どの違いにつながったと考えられますか。つまずきやすい点
Section titled “つまずきやすい点”- ざっくり渡すと雑になる、と思い込む。指定がないぶん既定が働き、かえって整うことがある
- 細かく書けば良くなると思う。書いた条件は守られるが、書かなかったことは失われる
- 分量を反射的に書く。課題で決まっていないなら、書かないほうがよいこともある
- 計画が立派だと安心する。実行されたかは成果物でしか分からない
- 形式の優劣で考える。用途に合っているかどうかだけ
もう一歩進む
Section titled “もう一歩進む”この章の本筋からは外れますが、知っておくと効くものです。
- 止まる場所を設計する(第2回候補)。「ここは必ず確認して」と書いた箇所で止まります。 どこを人が判断するかは、自分で決めて渡すものです
- Scheduled Tasks(第2回候補)。離席中も作業を進めておく仕組みです
- 接続アプリ。Teams、Google Drive、SharePoint などにある資料を材料として使えます
- 形式変換には時間がかかる。Word 文書の生成に時間を要した回がありました(約13分)。 締切間際に形式を変えるのは避けたほうが安全です
この章の情報について
Section titled “この章の情報について”- 情報確認日: 2026年8月4日
- ここに載せた記録は、ある1つの環境で3回実行した結果です。同じ結果になるとは限りません
- スライドとシートの出力は、公式の説明にはありますが、Work では実測していません (Excel ファイルの生成は、通常の Chat で確認しています。第2章)
- カスタム指示などの個人設定、使える機能、それまでの会話の文脈、製品の更新によって 挙動は変わります
- ですから、手順を覚えないでください。覚えるのは、渡すものを変えて比べるというやり方のほうです
- 画面に依存する説明は書いていません。操作は実際の画面を見ながら進めます
- 何も指定しなければ、そのまま最後まで進む。計画を出させ、止めるのは自分の指示
- 渡した条件は計画に現れる。とくに確認基準は、そのまま検証工程になる
- 書いたことは守られ、書かなかったことは失われる
- 用途を伝える。何で開き、誰に渡し、何のためか。形式に良し悪しはない
- 形式が決まっているなら直接書く。決まっていないなら用途を書く
- 条件どうしは引っ張り合う。分量の指定は他を押さえ込む
- 計画に書かれていても、実行されたとは限らない
次の章へ渡すもの
Section titled “次の章へ渡すもの”- 2通りで走らせた出力と、違いのメモ
- 自分の課題の4点(目標・資料・完成条件・確認基準)。目標に用途を書き足したもの
次は Deep Research です。調査を任せ、返ってきた引用を確かめます。 この章で残った「計画にあった確認は本当に行われたのか」を、成果物の側から見る話でもあります。