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第1章 道具の地図 — Chat・Work・Codex・Deep Research

ChatGPT には、目的の違う複数のモードがあります。どれが何に向いていて、いつ持ち替えるのか。 この章でその地図を持ちます。

多くの人が使っているのは Chat です。聞いて、答えをもらう。この研修で扱うのはその先で、 目標を渡して仕事ごと任せる使い方です。同じ ChatGPT でも、使う道具が変わります。

この章でできるようになること

Section titled “この章でできるようになること”
  • Chat・Work・Deep Research・Codex の役割の違いを説明できる
  • 自分の課題を工程に分け、どの工程をどの道具でやるかを割り振れる
  • 仕事を任せるときに何を渡す必要があるかを言える

説明のために、次の課題を通して使います。架空のものです。

2型糖尿病について、患者さんに渡す説明資料を作る。 読み手は52歳の男性。健診で HbA1c が高いと言われたが、自覚症状がなく受診に気が進まない。

医療のテーマですが、扱うのは題材ではなく道具です。他の学部の方は、ご自身の課題に 置き換えて読んでください。工程の分け方も、道具の選び方も、そのまま使えます。

質問して答えをもらう。この使い方だけだと、次のところで止まります。

  • 手順を自分が知っていないと頼めない。「次に何をするか」を考え続けることになる
  • 1往復で終わる。調べる、整理する、書く、直すという連なりは自分でつなぐ
  • 成果物まで届かない。聞いて終わりにすると、画面に文章が出たところで止まる
  • 前回の続きができない。別の会話を開けば、資料も前提も渡し直しになる

言い回しを工夫しても、この4つは残ります。足りないのは文言ではなく仕組みです。

2026年7月9日から、ChatGPT のデスクトップアプリ(macOS・Windows)に Chat・Work・Codex の 3つのモードが同居しています。加えて、調査に特化した Deep Research があります。

道具向く仕事主な作業場所手元に残るもの
Chat短い質問、相談、言い換え会話会話の履歴、作らせたファイル
Work目標から完成した成果物までChatGPT・接続アプリ・クラウドドキュメント、スライド、シート
Deep Research多くの情報源を調べて統合するWeb引用付きの調査レポート
Codexファイルとして扱い、貯めるローカルのフォルダ手元のファイル群

その場の質問、言い換え、簡単な要約に使います。

多くの方が使っています。ただ、検索の延長で終わっていることが少なくありません。 知りたい語を投げて、返ってきた答えをそのまま使う。それだと引き出せる力のごく一部しか 使っていないことになります。

Chat のままでもできることは、まだあります。第2章で扱います。

ChatGPT の中で動くエージェントです。目標を渡すと、材料を集め、手順を順に実行し、 つながった成果物を作ります。ドキュメント、スライド、シートなどです。

複雑な作業は小さな手順に分けて進め、必要なら数時間かけて続けます。離席していても 作業を進めておく仕組み(Scheduled Tasks)もあります。

ここで、先に知っておくとよいことが1つあります。

何も指定しなければ、Work はそのまま作り始めて最後まで進みます。

計画を先に見せてほしい、途中で確認してほしい。そう進めたいなら、こちらがそう書きます。 書けば、計画を出していったん止まり、承認を待ちます。

止まる場所は、指示で決まります。どこを人が判断するかは、自分で決めて渡すものです。 第3章で、実際に比べながら見ていきます。

多くの情報源を Web から調べ、分析して、引用付きのレポートにまとめます。 1回に時間がかかるので、待っている間は別の作業に回せます。

検索の対象を、信頼できるサイトに限ることもできます。学術的な課題ではこれが効きます。 第4章で扱います。

ローカルのフォルダとファイルを直接扱います。公式には開発向けの道具ですが、この研修では 課題をまたいで資料と成果物を貯める場所として使います。

Work が作った成果物は、その課題のためのものです。次の課題で引き出すには、手元にファイルとして 残しておく必要があります。参考資料、調査の記録、過去のレポート、レビューの記録、そして手順。 それを置く場所が Codex です。第5章で扱います。

次の順で考えます。

  1. 1往復で終わるか。終わるなら Chat
  2. 調べることが仕事の中心か。そうなら Deep Research
  3. 成果物を作るのが目的か。そうなら Work
  4. 課題をまたいで残したいか。そうなら Codex

ひとつの課題の中で、順に使い分けることになります。どれか1つを選ぶのではなく、 工程ごとに持ち替えます。

Work や Deep Research に任せるときは、言い回しより、渡す情報がそろっているかで結果が決まります。 最低限、次の4つを渡してください。

渡すもの具体的に
目標何を完成させたいか。作業ではなく成果物で言う。さらに用途まで言う(後述)
資料使ってよい材料。課題の要項、手元の文献、自分のメモ
完成条件締切、必須の項目、守るべき書式。出力の形(Word文書か、画面のテキストか)もここに書けます
確認基準何をもって「できた」とするか。どこは人が判断するか

抜けやすいのは4番目です。確認基準を渡さないと、止まらずに進みます。 「それらしい状態」で完了し、あとから直すことになります。

成果物の名前だけでは足りません。何で開き、誰に渡し、何のためのものか。そこまで伝えます。

同じ「2型糖尿病の説明レポート」でも、患者さんに紙で配る資料と、大学に提出するレポートでは 必要なものが違います。前者は章立てや図表があると読みやすくなります。後者は指定書式に従うべきで、 装飾はかえって邪魔になります。

形式に良し悪しはありません。用途に合っているかどうかだけです。 用途を伝えなければ、道具は自分の既定で形式を選びます。それが用途と合うとは限りません。

【 】 を自分の課題に置き換えて使ってください。

次の課題に取り組みます。
目標(成果物): 【何を完成させたいか】
何に使うか: 【誰に渡す、何のためのものか。何で開くか】
使ってよい資料: 【課題の要項、手元の文献など】
完成条件: 【必須の項目、守るべき書式、締切、出力の形】
確認基準: 【何をもって完成とするか】
人が判断する箇所: 【勝手に決めず、必ず確認してほしい点】
まず作業計画を提案してください。実行は、計画を確認してからにします。

最後の一文で、いきなり作り始めるのを止めています。計画の段階で直すほうが安上がりです。

  • すべてを Chat でやろうとする。できないわけではないが、工程をつなぐ作業を全部自分で背負う
  • 目標を作業で書く。「調べてください」ではなく「〇〇の説明資料を作る」と成果物で言う
  • 用途を伝えない。形式が用途と合わないものが出てくる
  • 確認基準を渡さない。止まらずに最後まで進み、あとから直すことになる
  • 道具の名前を覚えようとする。覚えるのは名前ではなく、どの場面でどれに持ち替えるか

その章の本筋からは外れますが、知っておくと効くものです。

  • Scheduled Tasks(第2回候補)。離席中も作業を進めておく仕組みです。 締切前に定期的な確認を回す、といった使い方ができます
  • 接続アプリ。Slack、Microsoft Teams、Google Drive、SharePoint などにある資料を 材料として使えます。学校が Teams を使っているなら関係してきます
  • 止まる場所を観察する(第2回候補)。Work がどこで判断を求めてくるかは、 その仕事のどこが人の領分かを示しています。工程を設計するときの手がかりになります

製品の機能や提供範囲は変わります。この章は次の時点の公開情報に基づいています。

  • 情報確認日: 2026年8月4日
  • Chat・Work・Codex の3モード同居は、2026年7月9日以降のデスクトップアプリ(macOS・Windows)
  • 画面に依存する説明は書いていません。モードの切り替え方などは、実際の画面を見ながら進めます
  • 聞いて終わりにすると4つのところで止まる。足りないのは文言ではなく仕組み
  • Chat=短い往復/Work=目標から成果物まで/Deep Research=調べて統合/Codex=貯める
  • 迷ったら「1往復で終わるか → 調べるのが中心か → 成果物を作るか → 課題をまたいで残すか」
  • 何も指定しなければ、Work はそのまま最後まで進む。計画を出させ、止めるのは自分の指示
  • 任せるときは目標・資料・完成条件・確認基準の4つ。抜けやすいのは確認基準
  • 目標は用途まで言う。形式に良し悪しはなく、用途に合っているかどうかだけ
  • 工程に分けた自分の課題と、道具の割り当て
  • 上のプロンプトに書き込んだ4点(目標・資料・完成条件・確認基準)。目標には用途まで書く

次は Chat です。多くの人が検索の延長で使っているところを、どこまで引き出せるか。 そして、どこから先は Chat では足りなくなるのか。第2章で見ていきます。