第3章 ThonnyとMicroPythonの準備
この章の目的
Section titled “この章の目的”この章では、Windows PCからPico Wへプログラムを送るための環境を準備します。 開発環境としてThonnyを使用し、Pico WにはMicroPythonを導入します。
最後に、ThonnyのShellから短い命令を実行し、 PCとPico Wが通信できていることを確認します。
この章でできるようになること
Section titled “この章でできるようになること”- ThonnyとMicroPythonの役割を説明できる
- Pico WをBOOTSELモードでPCへ接続できる
- Pico W用のMicroPythonファームウェアを導入できる
- ThonnyでPico W用のインタープリターを選択できる
- Shellに
>>>が表示されることを確認できる - PC側とPico W側の保存場所を区別できる
使用するもの
Section titled “使用するもの”| 分類 | 使用するもの |
|---|---|
| 制御用ボード | Raspberry Pi Pico WまたはPico WH |
| PC | Windows PC |
| 接続 | データ通信対応Micro USBケーブル |
| ソフトウェア | Thonny |
| ファームウェア | Pico W用MicroPythonの安定版 |
この章では、ブレッドボードや電子部品を接続しません。 Pico WとPCをUSBケーブルで直接接続します。
3-1 ThonnyとMicroPythonの役割
Section titled “3-1 ThonnyとMicroPythonの役割”Thonnyは、Pythonのプログラムを作成・実行するための開発環境です。 プログラムを入力するエディター、実行結果を確認するShell、 ファイルを保存・転送する機能などが1つの画面にまとめられています。
MicroPythonは、Pico Wなどのマイクロコントローラーで動作するように作られた Pythonの実行環境です。
PCとPico Wでは、プログラムを実行する場所が異なります。
| 項目 | PC側 | Pico W側 |
|---|---|---|
| 主な実行環境 | PC用Python | MicroPython |
| プログラムの実行場所 | Windows PC | Pico W |
| 主な用途 | 一般的なPythonプログラム | GPIO、センサー、LEDなどの制御 |
| Thonnyでの表示例 | Local Python | MicroPython (Raspberry Pi Pico) 系 |
Thonnyを起動しただけでは、実行場所がPCになっている場合があります。 Pico Wを制御する章では、Pico W用のインタープリターを選択します。
3-2 準備前の確認
Section titled “3-2 準備前の確認”作業を始める前に、次を確認します。
- Pico Wへ電子部品が接続されていない
- 使用するUSBケーブルがデータ通信に対応している
- Thonnyをインストールできる、またはインストール済みである
- 使用するPico W用MicroPythonファームウェアが指定されている
- USBメモリーなど、不要なリムーバブルドライブを外している
充電専用のUSBケーブルでは、電源が入ってもPCと通信できません。 接続できない場合は、最初にケーブルを確認します。
3-3 Thonnyを準備する
Section titled “3-3 Thonnyを準備する”研修用PCにThonnyがインストール済みの場合は、起動確認だけを行います。 未導入の場合は、講師が指定したインストーラーまたは配布方法を使用します。
- Thonny公式サイトを開きます
- 使用しているWindows PCに対応する版を確認します
- 講師の指示に従ってインストールします
- Thonnyを起動します
- エディターとShellが表示されることを確認します
PCの管理者権限やソフトウェア導入ルールによって、使用できる方法が異なります。 研修当日に判断して変更せず、事前に決められた方法を使用します。
3-4 MicroPythonファームウェアを確認する
Section titled “3-4 MicroPythonファームウェアを確認する”Pico WでMicroPythonを実行するには、 Pico W用のファームウェアを基板上のフラッシュメモリーへ書き込みます。
ファームウェアは、Pico Wを動かすための基本ソフトウェアです。
MicroPythonのファームウェアは、UF2という形式のファイルで配布されています。
研修では、講師が実機確認した安定版を使用します。 開発途中のプレビュー版は使用しません。
ファームウェアを個別に取得する場合は、 MicroPython公式のPico Wダウンロードページ またはRaspberry Pi公式ドキュメントから取得します。
次を確認してください。
- 対象が
Raspberry Pi Pico Wである Pico 2 Wなど、別の基板用ではない- ファイルの拡張子が
.uf2である - 研修で指定された安定版である
バージョン番号は更新されるため、本文中で特定の番号に固定しません。
3-5 Pico WをBOOTSELモードで接続する
Section titled “3-5 Pico WをBOOTSELモードで接続する”BOOTSELモードは、Pico Wへファームウェアを書き込むための状態です。
- Pico WからUSBケーブルを外します
- Pico Wの
BOOTSELボタンを押したままにします - ボタンを押したまま、USBケーブルでPCとPico Wを接続します
- Windowsにドライブが表示されたら、
BOOTSELボタンを離します - エクスプローラーで
RPI-RP2ドライブを確認します
通常の接続では、RPI-RP2ドライブは表示されません。
このドライブが表示されるのは、BOOTSELモードで起動したときです。
3-6 MicroPythonを書き込む
Section titled “3-6 MicroPythonを書き込む”- 研修で指定されたPico W用の
.uf2ファイルを確認します .uf2ファイルをRPI-RP2ドライブへコピーします- コピーが完了するまでUSBケーブルを外しません
- 書き込み後、
RPI-RP2ドライブが消えることを確認します - Pico Wが自動的に再起動するまで待ちます
書き込み後にドライブが消えるのは正常な動作です。 Pico WはMicroPythonを実行する通常の状態で再起動します。
すでに研修用のMicroPythonが導入されている場合は、 講師の指示がない限り、ファームウェアを書き直しません。
3-7 ThonnyからPico Wへ接続する
Section titled “3-7 ThonnyからPico Wへ接続する”- Thonnyを起動します
- Pico WをUSBケーブルでPCへ接続します
- Thonnyのインタープリター設定を開きます
- Pico Wに対応するMicroPythonインタープリターを選択します
- ポートはPico Wが接続されたポート、または自動検出を選択します
- 設定を確定します
- 必要に応じて、停止またはバックエンド再起動の操作を行います
- Shellに
>>>が表示されることを確認します
Thonnyの版によって、設定画面を開く場所や項目名が変わる場合があります。
インタープリター名も、
MicroPython (Raspberry Pi Pico)またはPico W用と分かる名称で表示されます。
研修で使用する版の画面は、実機検証時に確認します。
COMポート番号はPCやUSB端子によって変わるため、
本文中ではCOM3などの固定値を指定しません。
3-8 Shellで接続を確認する
Section titled “3-8 Shellで接続を確認する”Shellは、Pico Wへ短い命令を送り、結果をその場で確認できる領域です。 MicroPythonの対話画面はREPLとも呼ばれます。
Shellに>>>が表示されたら、次の1行を入力してEnterキーを押します。
print("Pico W ready")次のように表示されれば、ThonnyからPico Wへ命令を送れています。
Pico W readyこの章では、print()の仕組みを詳しく説明しません。
Pythonの基本は第4章で扱います。
3-9 エディターとShellを区別する
Section titled “3-9 エディターとShellを区別する”Thonnyでは、主に2つの場所を使います。
| 場所 | 用途 | 実行の特徴 |
|---|---|---|
| エディター | 複数行のプログラムを作成・保存する | 実行操作を行ってまとめて動かす |
| Shell | 1行ずつ命令を試し、結果やエラーを確認する | 入力後すぐに実行される |
後の章では、完成済みのプログラムをエディターで開いて実行します。 Shellは、実行結果、エラーメッセージ、センサーの値などを確認するために使用します。
3-10 保存場所を区別する
Section titled “3-10 保存場所を区別する”Thonnyからファイルを保存するときは、 PC側とPico W側のどちらへ保存するかを選ぶ場合があります。
| 保存場所 | 主な用途 |
|---|---|
| PC | 配布されたプログラムの保管、編集前の原本、バックアップ |
| Pico W | Pico W上で実行するプログラム |
同じファイル名がPC側とPico W側の両方に存在することがあります。 どちらを編集・実行しているか分からなくならないよう、 ファイル一覧の保存場所を確認します。
実際のファイル保存と実行は、後続の章で行います。
次の項目を確認してください。
- Thonnyが起動する
- Pico WをUSB接続できる
- Pico W用MicroPythonが導入されている
- Pico Wに対応するMicroPythonインタープリターが選択されている
- Pico Wのポートが選択されている
- Shellに
>>>が表示される -
print("Pico W ready")の結果が表示される
よくある問題と確認方法
Section titled “よくある問題と確認方法”| 状況 | 主な確認箇所 |
|---|---|
| Pico Wの電源が入らない | USBケーブル、USB端子、コネクターの差し込み |
RPI-RP2が表示されない | BOOTSELを押すタイミング、データ通信対応ケーブル、別のUSB端子 |
.uf2のコピー後にドライブが消えた | 正常動作。Pico Wが再起動したことを確認する |
| インタープリターの選択肢が見つからない | Thonnyの版、設定画面、更新の要否 |
| ポートが表示されない | USBケーブル、接続順、他の通信ソフト、USBハブ |
Shellに>>>が表示されない | インタープリター、ポート、停止・バックエンド再起動 |
| デバイスが応答しないと表示される | 実行中プログラムの停止、USBの再接続、Thonnyの再起動 |
| 接続のたびにCOM番号が変わる | 固定番号を前提にせず、現在接続されているPico Wを選択する |
問題が解決しない場合は、設定を何度も変更せず、 表示されたメッセージを講師と一緒に確認します。
- Thonnyは、プログラムの作成、実行、転送、結果確認に使用する開発環境です
- MicroPythonは、Pico W上でPythonのプログラムを実行するための環境です
- BOOTSELモードでは、Windowsに
RPI-RP2ドライブが表示されます - Pico Wには、Pico W用の安定版MicroPythonファームウェアを使用します
- Thonnyでは、Pico W用のインタープリターと現在のポートを選択します
- Shellに
>>>が表示されれば、MicroPythonへ命令を入力できます - 保存場所にはPC側とPico W側があるため、どちらを操作しているか確認します
次の第4章では、後のサンプルコードを読むために必要なPythonの基本を確認します。